まずは[主軸]を作りましょう。

マシーン自体は既存の自作CNCを使用し[主軸]を換装しATCを取り付ける事にします。

ここで[マシニングセンタ]の[主軸]において重要な事は簡便に刃物が(実際にはツールホルダーごと)着脱できる構造である事。

そして又、忘れてはいけない工作機械としての重要な条件・・・・そうです、精度です。

[軸受け]から[刃物先端]までの結合部が多くなる為の精度の低下・と・言う事と・・・相反する[高精度]の追求を両立しなければならないところに今回の難しさがあります。

が・・・こつこつと一生懸命にやれば・・・何とかなるでしょう  ヽ(^。^)ノ
【 主軸の設計をしよう 】
【ツールホルダー】

まず主軸を作る前に、どんなホルダーを使用するか設計段階で充分に検討しましょう。

ATCでは主軸に取り付いた刃物単体を直接交換すると言ったわけにはいきませんのでホルダー毎で交換しなければなりません。

小型工作機械に多く使用されているMT(モールステーパー)では自己拘束型(外部からの力が無いと外れない)である為に主軸に深く刺さり過ぎ抜き差しが困難ですね。

色々と思案するとナショナルテーパがベストでしょうか・・

・と・言う事で左画像の#20のナショナルテーパーのホルダーを使用します。

これよりの説明は図面を印刷されてご参照しながら見て頂ければ、より一層イメージが伝わると思います。

詳しい図面はこちらからダウンロードして下さい (PDF形式7枚を圧縮して約1.0MB程度です)

JWW版等の図面がご希望の方は別途メールにてお問い合わせ下さい。

【 主軸ケースを作ろう 】
まずは[主軸]の[ケース]から作りましょう。

最初に図面通りに加工する為に、その素材であるアルミブロックの外形を整えましょう。
材質は#5,000若しくは#6,000程度の加工しやすいものでOKです。

ここで次の穴加工の為の完全に並行な一対の辺を持つ正確な角ブロックを作っておかなければなりません。

引き抜き材端面をフライスで挽いて[基準面]としましょう。
引き抜き材は意外と角度は出ているようですがバイスに銜えた材料の4側面にインジケーターを当てて上下させ材料が垂直に立つようにセットして一旦、上面を挽きます。

各側面に対して、その対面が並行で無い場合は、その中心値を取りましょう。ここではあくまでも材料を垂直に立てる事が重要です。
一旦、端面を挽いた材料を定盤に置きますが、この時に先ほど挽いた[基準面]を下にして置きましょう。

次にハイトゲージを使用して側面に図面通りの寸法のケガキ線を入れておきます。

また、各四隅の高さも正確に測って起き次にフライスにセットする時に、上面にインジケーターを走らせてその寸法差を加減算してセットしましょう。
フライスで端面を旋削する訳ですが刃物は[フライスカッタ]でも[太目のエンドミル]でも良いでしょう。

ただし刃物径以上の幅の材料を挽く訳ですから重ね目がに段違いの刃物痕が残らないように今回はΦ25mmの[ラジアスタイプ]を使いましょう。

これはピン角が丸くなっている為に旋削の重ね目に段違いの刃物痕が残りにくいです。
いくら調整した機械でも必ずと言って良いほど左右に若干の主軸の傾きがあります。

極端な場合は挽いた刃物の移動中心が船底に凹んでしまいます。

故に幅広の刃物で極力[オーバーラップ(重ね幅]を大きくして回数多く挽く事が重要です。
兎にも角にも[面精度(粗度)]を上げるのでしたら塗装と同じように仕上げでは立てと横に挽いて見るのも良いでしょう。

余談ですが、主軸の調整が上手くされていれば挽いた[目]は[クロスハッチ]若しくは[鍛造肌]のようになる筈です。

両端面の旋削が終わったらバリ取りをして再度定盤の上で対面の平行度を計測しましょう。

もし若干の狂いでしたら定盤にペーパー(紙スリ)を貼り付けて手で研磨して高い分部を磨き落としましょう。

この時にブロックの寸法が若干程度・図面と狂っていたとしても特に問題はありません。

次に平行度の出た一対の面を持つブロックが完成しましたら次は穴加工の為の中心線をケガキましょう。

この場合は[第二の基準面]として先ほどの旋削面に90度位置する側面を選び、その面を底にしてケガキ線を両端面に入れてゆきます。

当然円の中心は図面寸法では無く[実測/2]の高さです。

次に同じように[第三の基準面]として違う側面を選び、その面を底にしてケガキ線を両端面に入れてゆきます。

これで[クロス線]ができ、その交点が円の中心点となるわけですね。
それではケガキの終わったブロックを旋盤の4つ爪チャックに銜えましょう。

別の【特集】で何度もご紹介していますので詳しくは説明しませんが、先ほどの円の中心点に芯出し用の基準棒をセットして棒の振れをインジケーターで見ながら・・・かつ・・ブロックの側面にダイアルゲージ等を当てて両方の振れが最小になるようにチャックの爪の締め加減とプラスティックハンマーの打撃で調整しましょう。

後は何と言った事はなく普段通りにセンタードリルや普通のキリで下穴を開けて・・・次にボーリングバイトで図面通りに仕上げて行くだけです。

両端面の加工が必要ですので片面が終わったら材料をトンボ(反転)させて同じ要領で加工しましょう。
加工途中はもちろんの事・完成後も穴の内測を行いましょう。

シリンダーゲージやボアゲージを使用して正確に測りましょう。
ブロック(主軸ケース)ののベアリングホールの加工が完了しましたら次はCNCを使い4側面の加工を行います。

・・・と・・言っても・・・加工データーを図面から抽出するだけで後は機械(CNC)任せで・・・コーヒータイムです  (^_^;)
CNCでの4側面の旋削は完了しました。

これって・・・マシニングが完成して既に有る[A軸]を使えば・・・

ひょっとして・・・・
   ワークをセットさえすれば・・・朝までに完了してる・・って話?

    凄いぞぉ〜  マシニング

              (^。^)
ウレタン塗装の為に下地を作ります。
いわゆる塗装が剥がれ辛くなるように[足付け]といって表面積を増す処理です。

何って〜事は無く、ベアリングホールとネジ穴にマスキングを施して、あとは[サンドブラスト]をかけるだけです。

 中々良い仕上がりです・・・

何だかアルミダイカストのエンジンブロック見たい (^。^)
タップ穴などの中を水洗とパーツクリーナーで洗浄して次にエアーブローで完全に清掃しておきましょう。
サイドプレートも先ほど同様にCNCで旋削して作りましょう。

ここで図面の間違いが無いか[仮組み]をして確認しておきましょう。
サイドプレートも[サンドブラスト]をかけて塗装の為の[足付け]を行っておきましょう。
実のところ[主軸]の製作については後に説明しますが実際には平行して製作しています。

そんなんでぇ〜大よその形になってきましたので[仮組み]で主軸も組んでみて全体的な感じをチェックしましょう。


  うむ〜っ  頭の中のイメージ通りです。

             ヽ(^。^)ノ


なんと言っても毎日・毎日〜部品単品を作っていたのでは何だかモチュベーションが下がってきて飽きてきます  (^_^;)

そんな時に[仮組み]をして完成をイメージすると再度元気が出てきて先に進めるんです

              (^。^)
元気を取り戻したところで[ケース]や[サイドプレート]と同様にCNCで製作した[ベースプレート]を組み立てましょう。

従来は[Tig溶接]を多用していましたが・・・

今回は【誰でも作れる・・・】ってなコンセプトなものですから・・・

アルミの結合を【接着】でやってみる事にしました。

ただし・・・接着だけでは、かなり不安ですので裏から12本のM6キャップスクリューで締め付ける複合的な結合にしました。

使用した接着剤は[セメダインのY-610]と言う2液性エポキシ系の接着剤です。

これは[シュガー佐藤さん]がゴルフクラブのヘッドとシャフトの結合に使用されている物で以前に同氏から戴いた物です。


アルミの接着の場合は接合面が重要であり[引き抜き材]や[旋削面]の素地では、多分何を使用しても簡単に剥離してしまうと思います。

ゆえに重要な事は接合面の下地処理であり[サンドブラスト]等による[足付け]と洗剤やパーツクリーナーによる[脱脂]が必要不可欠です。

私の推測ではアルミ素地より[アルマイト処理面]の方が接着に適しているのでは・と・思います。

余談ですが『ボルト12本も使えば、それだけでも・・・』って思われる方もいらっしゃると思いますが、NGです。

工作機械の構造体においては[剛性]と[硬性]が必要でボルトだけでは、せん断と引っ張りには強くても斜め方向の応力に対しては押さえが利きません。

ですから・・接着剤との複合により面の密着が必要なのです。

また、接着剤使用は接着剤が異種の緩衝材として振動を吸収してくれる利点もあります。
それでは塗装をしましょう。

色はもちろん[G・B YUSAイエロー]です  ヽ(^。^)ノ

[密着剤]を薄く塗布して[2液ウレタン塗料]で仕上げます。

接合面は割れますし寸法が狂いますので[マスキング]を施し塗装を避けましょう。

ケース裏面にはケース内部に通ずる穴を設けて[ワンタッチ継ぎ手]を取り付けておきましょう。

これはツール交換の時にテーパー部の塵を主軸の内側からエアーブローさせて飛ばそうと言う考えです。
それでは塗装も終わりましたら組み立てて行きましょう。

両サイドのプレートの間にケースを滑り込ませて行き中心の穴にボルトを入れます。
このボルトがケースのピボットになり後々の主軸の前後の振り調整の時の支点となります。

当然周りの4本の固定ボルトの穴は調整可能なように若干大きめにしてあります。
モーターブラケットも取り付けて一応形になってきました。
【 主軸(軸)を作ろう 】
一般的な主軸自体は今まで沢山作ってきましたので特段ご紹介する内容ではありませんが、今回はATC対応と言った、ちょっと一味違った事が要求されます。

と・言うのはツール交換の為にホルダーを簡単に交換させなければなりませんが、そのために取り付けのテーパの刺さり込みが緩い為に何らかの方法で強く引っ張らなければなりません。

で・市販のホルダーには[プル・スタッド]なる物が取り付くようになっており、この分部を汎用機はコレットチャックで強く引っ張っています。

今回は、私も・この方式でこれを利用しましょう。
で・・上の図のような主軸を作る事にしましょう。
【まずは主軸本体を作ろう】

いよいよ主軸本体を作るわけですが、まずは材料を用意しましょう。

材料と言っても一般的な物で鉄材の[S45C]を使いましょう。

 棒材の Φ40mm から削り出して作りましょう。
まずは丸物ですから、お決まりのセンターをケガきます。

何事は無く基本通りに[Vブ゜ロック]に乗せてハイトゲージでケガキ線を入れるだけ。

一般的には・・・下記の方法です

@予めノギスで丸棒の直径を測っておく。
Aハイトゲージを一旦、丸棒の頂点に合わせてカウントをゼロセットする。
B上記の位置から先程@で測った直径の1/2分だけハイトゲージの先端(スクライバー)を下げる。
Cその位置で丸棒の端面にケガキ線を入れる。
D上記で書いたケガキ線が垂直になるようにスコヤなどを使い90度回転させる。
E先程のハイトゲージの位置で、もう一度ケガキ線を入れる。
上述で書いたケガキ線の交点にポンチを打って中心点としましょう。

最近は近視の老眼で・・・目が悪いので今回は自作の[オプティカル・ポンチ]を使います。


使うと言っても・・・何の事は無く丸棒の端面に[オプティカル・ポンチ]を乗せてレンズの中心にあるクロス線中心と先程のケガキ線の中心を合わせて・・・

     慎重に・・・・

良ければ[オプティカル・ポンチ]のレンズ分部を抜き取り、その代わりに専用のポンチを差込・・・ハンマーで『コツン』ってただ、それだけの事。

ただ・・・・それだけ・・って、それだけで高精度なポンチが打てる訳ですから最初に、この[オプティカル・ポンチ]を考えた人は優者ですね。

このレンズが・・・ほんと考えてあり外部の光を集光する為に暗いはずの穴底が非常に明るく見易いですね。

また当然の事ですが反転して使えるように、かつズレ内容に滑り止めとしてOリングが当り面に仕込んであります。

さてさてセンターにポンチが打てたところで[センター穴]を加工しましょう。

当然の如く旋盤のセンター押しで使用する穴ですから[センタードリル]を使用して穴をあけます。

Vブロックなどの治具を使用して極力・垂直にワークを取り付けて加工しましょう。

ちなみに画像で使用している物は・・・安物のマグネット付きのVブロックです。
さて次は旋盤の段取りです。

私の手法として高精度の加工をする場合いつも行う作業です。

あえて[硬い3つ爪スクロールチャック]を使用して[内爪]を研ぎます。

[生爪]の成型の要領と同じです。
極力加工する丸棒の外形と同量チャックを開き、奥には同寸の丸棒の端尺を銜えさせておきます。

後はマイクログラインダーを取り付けた刃物台を摺動させればOKです。

理論的には、これでなかりの精度がでるはずですね。
いよいよ、それではチャックに先程の丸棒を銜えてセンターを押して荒取りを行います。

今回は少しでも精度を出す為に[回転センター]は使わず[固定センター]を使いましょう。

但し・・・ここが微妙です。
と・言うのは私の旋盤は超硬等のチップを使う為に周速(回転)が上がるようにセッティングしてあり今回も周速を上げて使います。
この場合[固定センタ]では非常に摩擦により温度が上昇する事が考えられます。場合によってはセンターの[焼付き]も・・・・

故にセンターの当り分部には光明丹を潤滑油(2サイクル用混合オイル)で溶いた物をタップリ塗って使用します。

  それでは旋削開始です。
[S45C]は旋削し易い材料です。

荒取りが終われば各部位の寸法を図面通りに仕上げてゆきましょう。

ただ、ここでは旋削油を塗布しながら加工する訳ですが、工場で使っている汎用旋盤のようにクーラント(旋削油)をジャバ掛けして旋削する訳では無く加工温度については[ドライ旋削]に等しい状態です。

現実に荒取りの状態ではワークの温度が50℃以上になっています。

これでは、いくらマイクロメーターで外径寸法を測っても素材の熱膨張により無意味です。


対策としては加工規定寸法に近づいてきたら一旦機械を止めてワークを冷却しましょう。

今回の場合は[アイスパック]を乗せて冷やします。
かなり冷えたら、又暫く放置して中外共に(芯まで)常温に戻るのを待ちましょう。

ただ、待つと言っても、そう長くの時間は不要です数分でOKでしょう。

良ければ再度寸法を計測しながら旋削を続けましょう。
細かく温度を測りながら上述の作業を繰り返します。


アマチュア加工において加工中はピッタリの寸法のはずが実際の組立てでは緩かったり・・・きつかったり・・・って場合は意外と加工温度の上昇による素材の膨張状態で寸法どおり削ってしまい常温に戻ったら寸法が小さくなっている・・・って事が多いようです。
ちなみに私は荒取り・仕上げ共に寸法間違えを起こさない様に1/1の型紙を作って都度見比べながら旋削しています。



YUSAいわく
『初心者(私の様な)は己の技量を知り自分が初心者である事を認識して手立てをこうずれぱ意外と玄人以上の仕事が出来る』
ここでトンボ(反転)しての加工です。

基本的にはトンボすると芯がズレますのでやりたくないのですが・・・

いくら加工手順を再検討しても私の機械では・・・トンボせざるおえないのです・・(ーー;)

もうチョット主軸の貫通径の大きい旋盤だったら・・方法も有るんですが・・・

そんなんで[振れ止め]を使う事にします。

[センター]同様に[固定の押し(燐青銅)]を使いたいのですが、このスピードで外周を摺らすとなると必ず[焼付き]を起こしますので今回は[ベアリングタイプの押し]を自作して使用する事にしましょう。
それではトンボして段取り(芯出し)です。

ダイアルゲージとインジケーターをセットします。
[芯出し]調整です。

まずは[振れ止め]の全ての[押し]を完全に緩めておきます。

次に各ダイアルゲージとインジケーターを見ながらワークを手で回転させながら[上/下]の振れ[前/後]の振れがゼロになるように[銅ハンマー]で叩きながら芯を出してゆきます。
上述で芯が出たようでしたらダイアルゲージとインジケーターの外周目盛りを回して針を[ゼロセット]しましょう。

ここからが微妙です。

ワークの外周3箇所に配置されている振れ止めの[押し]を均等に押して行きます。

この時、どちらか一方に押し過ぎるとゲージの針は微動しますので他の2方をもっと押し込みます。
場合によっては緩めます。

いわゆる[4つ爪]チャックと同じ事を3点で行うわけです。
精度を出す為に若干強めに締めこみ(押し込み)ます。

押しのベアリングが長持ちしない事は覚悟の上です。

上手く芯が出たら残りの外形を旋削して寸法を出してゆきましょう。
【コレットチャック(プルチャック)も作ろう】

主軸の外形加工が終わったら次は[コレットチャック]を作りましょう。

これも[S45C]の丸棒から旋盤を使って旋削します。
それでは作業を進め下図の通りに作りましょう
先程加工した主軸の内径にコレットの外形を合わせます。
次にコレットチャックの外周の3箇所にスチールボール用の穴をあけます。

・・・・が・・完全にストレートの穴を開けたのではボールが内側に落ちてしまい笑い話になっちゃいます。

そこでフライスのテーブルに回転台を載せてスチールボールと同径の[ボールエンドミル]を使用して加工しましょう。

この時にエンドミルを貫通させずに最後の縁の皮一枚を残します・・・ここがミソです。
コレットにプッシュロットを取り付けスチールボールを入れて[プルスタッド]との嵌り具合を確認しましょう。


  よしよし・・・OKです。   (^。^)
この[コレットチャック]は強力なバネの力をスチールボールを介してツールホルダーを引っ張りますので・・・S45C程度の生材では直ぐに変形してしまうでしょう。

そこで[焼き入れ]です。

これは・・いつもお部下に入れていますので得意です・・・(^_^;)

何と言った事はありません今回はハンディ・バーナーでオレンジ色になるまで炙って・・あとは冷水に『チャプ〜ん』です。

S45Cで、このくらいのサイズと形状であれば、このような[ズブ焼き]で[焼鈍]を行わなくてもOKでしょう。

   多分・・・割れはこないと思います。
焼き入れが終わったらコレットチャックの外周に螺旋の溝を入れます。

マイクログラインダーに[ダイヤモンドバー]を取り付けて[飛騨高山の職人技法]で加工します  (^_^;)

なぜ・・・最初に加工しておかなかった・か・と・言うと形状的にあまり厚さの差異がある場合・・・先程の[ズブ焼きのみ]では変形や割れが発生する確率が高くなるからです。
   完成した[コレットチャック]です。


みなさんの中には『どうしてスチールボールを4個にしないのかなっ・・その方が引っ張り強度的にも・・・』って思われる方がいらっしゃるかと思います。


スチールボールを3個にした理由は組み立て調整の時に、共回りしないように市販の六角レンチが使えるように・との配慮からです。


できる事なら6個に、したかったのですがコレットのサイズやスチールボールのサイズ等々の制約から3個になりました。



・・・・『ところで・・・先程加工した外周の溝は・・?』って

実はATCでツールホルダーを交換する際に先の切削で巻き上がった切削粉塵が主軸との結合部に付着している可能性がある為に・・・ツール交換時に先程ケース後部に取り付けた[ワンタッチ継ぎ手]から入れた[エアー]を[主軸]内部を通して、この[コレット]の外周溝から噴出させる事により主軸テーパー内表面とツールホルダーのテーパー外周をサイクロン状に掃除させよう・・・って・・言う・・仕組みなのです。

多分・・ただエアーを隙間に『ボワ〜』って吹いたのでは非常に高圧で高風量でなければブローの効果は期待できませんので、このようなノズル形状にしました。
【主軸の加工の続き】

それでは・・・主軸の加工の続きをやりましょう・かぁ〜

未体験の一番心配していた分部の加工です。


    そ〜です !   主軸テーパー軸穴加工です。


             (ーー;)

まずは左の市販品のホルダーから採寸して図面を起こしましょう
下が詳細図面です
それでは各寸法が決まったところで旋盤に[トップスライド]を取り付けて角度旋削をやりましょうか。

まずは角度の模範に市販のツールホルダーを銜えて芯出しを行って見ましょう。
トップスライドのセット角度を維持したまま、今度は先程同様に振れ止めを使用して取り付けた主軸の芯出しを行い・・・・

   加工スタートです。

穴加工と言ってもテーパー部だけでは無く下の図のように内部はコレットチャックの玉の逃げ溝等々・・・結構複雑な形状です・・・が・・・

穴が細く中が見えません・・・まるで盲目の操縦士です。

では・・・加工できませんので旋盤に取り付けてある[デジタルスケール]を頼りに人間CNC旋盤です。

バイトの切削音と感覚・・・そしてスケールの表示で右に何ミリ・・・左に何ミリ・・・前に何ミリ・・・(ーー;)
兎にも角にもテーパー穴も大よそ出来上がりました。

市販のツールホルダーを模範にしていますので『ピタっ〜』って・・・

そう上手くはゆきません・・・(^_^;)

光明丹を塗ってホルダーを差込み[朱]の移りにより当りを診(見)ます。

トップスライドの角度を僅かに『コッ・コッ』っと修正します。

希望は若干・入り口が強く当る程度にしたいのです。
殆どよければ深追いはせず後は小片のペーパーをホルダー側に貼り付けて軽くラッピングしてみましょう。
テーパーが苦労の末に見事完成しましたら次は反対側のネジ切りです。

これはネジ切り用の専用チップを使い超低速で行えば簡単な作業ですね。

ただ、これは一発で切り込まず[スレットダイアル]の目盛りを見ながら同じ位置から何回にも分けて切り込んで行く事が重要です。
【ベアリングの仮組み】

主軸が本体が完成しましたら取り合えず[ベアリング]を仮組みしてみましょう。

今回は[アンギュラベアリング]の[5205C-CTYN P5]を一対で下図のように使用します。
私の場合、通常では扱い易い標準の[ボールベアリング]で軸受けを組むのですが・・今回の場合はATCと言う事でツールの開放時に強大な力がスラスト方向に掛かりますのでアンギュラベアリングにしました。

ただアンギュラベアリングには[シール付]はありませんので両端外側にシールの代わりとラジアル方向へのブレ止め強化の意味で[ボールベアリング]を組み込みます。
[アンギュラベアリング]の初期グリス充填には、まずはいつもの[マイクロロン]を塗りこんでから一般的なグリスを充填しましょう。

塗りこみは、まずベアリングをパーツクリーナー等で脱脂して充分乾燥させた状態で塗りこみます。

ただし、この脱脂状態で無意味にベアリングを回転させないように注意します。

いくら無負荷と言っても全くの無潤滑の状態で金属同士が擦れ合うのはよくりませんから。
完成した主軸に各ベアリングを仮組みした状態です。

それらしい雰囲気を醸し出しています・・・で・しょ  (^。^)

ちなみに今回は主軸(軸)は3本作っていますので、その中で一番精度が良い物を使いましょう。
【精度検査をしてみよう】

ツールホルダーを軸にセットしてチャック内面と刃物シャンク外周の両方で振れを見て見ましょう。


【チャック内面での振れ】は      1/100 mm程度
【刃物シャンク外周での振れ】は    5/100 mm程度

[ユキワ]の商品はかなり高精度なので、この振れは多分・・・全てホルダーとの結合部であるテーパー加工の精度だと思う。

しかし・・・私の技術では、これが精一杯・・・と、取り合えず一旦は妥協しましょう・・・(ーー;)
ちなみに、軸の中間に空いた、この穴は・・・・

そうです、前述したケース後部から入れるエァーが、この穴を通って軸の内部に流通するのです。

それと、軸の黒色は[陽焼け]でも[黒染め]でもありません。
どちらかと言うと[陽焼け]に近いかな・・(^。^)

実は・・・軸も[ズブ焼き]で焼き入れをしておきました。
軸周りの構成部品です。

右下に見えるのがツールホルダーを常時、強い力で引っ張るスプリングで[プレス機器]用です。

ちなみに[バネレート]は3.25Kg/mmwで
設計セット荷重は 26Kg です。

その時の開放荷重は 42.25Kg に設計ではなるはず・・
主軸を駆動する為に[ACサーボ]を用意しましょう。

今回は安川の400Wの旧機種である[SGDA-04A]+[SGM-04A]の組み合わせで使用します。
Φ10mm程度のエンドミルも使いたいとなると最低400W程度は必要だと思います。
サーボパックはMachでコントロールする為に[パルス入力]タイプがベストでしょう。

このサーボの常用回転数は 3,000rpmですが
定格トルクで短時間か若しくは80%以下のトルクであれば4,500rpmでの使用に耐えます。

サーボの接続や制御については
別【特集】の【Mach2によるACサーボコントロール】で詳しくご紹介していますので、そちらをご参照下さい。
【ドライブプーリーを作ろう】

今回はΦ100mmのアルミ丸棒から2段掛けのプーリーを削りだします。

設計回転数は 1:1の常用回転と高速用で 1:2.2の設計

最高回転数は 約9,800rpm の予定

ただ設計上検討しなければならない事があります。
と・言うのはベルトの掛け替えの度にテンション(張り)を調整するのは非常に面倒ですので、どちらの段にベルトを掛けても外周長は同じになるようにプーリー径を設計しなければなりません。

設計寸法が決まれば、あとは旋盤加工です。

図面通りに荒取りが終わったら、いよいよ溝入れです。

最初に3mm幅の[突っ切りバイト]で溝底まで切り込んで起きましょう。

次に切り刃の形状をベルトの角度に合わせた[ヘールバイト]で溝の側面を旋削して寸法通りの幅に仕上げましょう。

何と言った事は無く、これだけでプーリーは簡単にできてしまいます。

   但し、キリコ(切削屑)は2個加工したらゴミ袋1つくらいでます

                (^_^;)
従来はプーリーの軸への固定は軸側の[Dカット]にセットスクリューなんてのが多かったのですが今回は本格的に[スピルキー]による結合に挑みます。

私の【特集】の記事の【ブローチを作ろう】で詳しく紹介していますので、そちらも参考にして下さい。
キー溝加工も終わりましたら、ついでに[アルマイト加工]もしましょう。

これは結果的な事ですが、外観上の美観だけではなくプーリーにおいてはアルミの素地よりベルトの[食い付き]が良くなり、かつプーリーの[減り]が極端に改善されるようです。
それでは駆動側(ACサーボ軸)・従動側(主軸)の両軸に完成したプーリーを取り付けて[モーターベース]でベルトの張りを調整しましょう。
【リベンジング】

どうも・・・主軸(軸)の精度に関する完成度を私のプライドが許さない・・・・(ー_ー)!!

色々な部品の複合体である主軸において、ただ単に一つ一つの加工精度を上げても結合による精度の低下は免れない。

じゃ・・・組み立てた状態で軸のテーパー部を研磨して全てを相殺してまおう。

取り合えず、組みあがった主軸を旋盤のベットに固定しよう。次に、お得意の[マイクログラインダー]をトップスライドに取り付けて[簡易ツールポストグラインダー]にしよう。

この状態で主軸のACサーボに電源をいれて回転させながら研磨を行う。

研削代は、せいぜい1〜/1,000程度しか行かないので根気よく作業を進めよう。

刃物で旋削した時と同じように光明丹を塗り当りを見ながら調整してゆこう。

結果は良好・・・軸内テーパーでの振れは"ゼロ"

刃物軸外周でも 1/100mm以下と驚きの精度だ(この手法では当たり前の事ですが)

これで・・・YUSAのプライドは保たれました 

          ヽ(^。^)ノ
【コレット開放装置を作ろう】

先程も述べたようにスプリングで約30Kgもの力で引っ張ってるコレットチャックを解放するには約40Kg以上の力でスプリングを押し縮めなければならないのです。

[強度]・[機能]・[軽量]・[美観]この四つを充分に踏まえた上で各部品を設計しよう。

後は設計したCADデーターから切削データーを抽出してCNCで削りだすだけ・・・・本当にCNCは便利な物だ  ヽ(^。^)ノ
機能を追及すると・・・・そこには[美]が生まれる。

当たり前の事ではありますが・・
図面通りに出来ている (^_^;)

この一見、華奢にも見えるブラケットには片側で20Kg以上の引っ張り応力が掛かる。

故に三角形状で外周にリブを配した構造なのです。
尚、応力は形状の中心では無く表面に発生しますので後でアルマイト処理により表面硬度を上げます。

いわゆる中に弾性を持たせ外に硬性を持たせトータルで強度を上げる手法です。
主軸箱(ケース)には片側2本のM6のスタッドボルトにて固定します。
[コレット開放装置]の構成部品です。

開放の為の所要動力源は主軸全体の重量軽減の為に主軸には配置せず別置きとして[ワイヤー駆動]しましょう。

また動力源は、誰でも作れて、どこでも動かせれるようにエアーシリンダー等の特殊な物は使用せず一般的なDC24V ギャーモーターのリサイクル品を使いましょう。
軸とワイヤーに引かれる半プーリーの結合は必ず[スピルキー]を使用して強固な結合にしておきましょう。

ちなみに・・・この引きに使用するワイヤーはホームセンター等で売っているチャリンコ(自転車)用のワイヤーです。

種類も数多くあるようですので好みの物が選べるでしょう。
コレット開放の為に[プッシュロット]を押す為のカムです。
磨耗等を考慮して偏芯させた軸にケース付のニードルベアリングを装着しています。

内部構造は左2枚上の画像を参照して頂ければ分り易いと思います。


通常は僅かなクリアランスで主軸頭部のプッシュロッとの調整ナットとカムフォロワーベアリング(ニードルベアリング)のケースが接触しないように調整し、またリターンスプリングでワイヤーに張りを与えておきます。
サイドのブラケットは左右の傾き(上部の開き)を防止する意味で必ず後部にメンバーを取り付けて結合しておきましょう。
当然ワイヤーは経年使用により伸びが発生しますので後々調整が出来るように[アジャスト機構]を取り付けて充分な[引き代]を確保しておくと良いでしょう。

手動開放の為に[レバーハンドル]を取り付けておきましょう。

邪魔にならないように取り合えずレバー先端を後ろ向きにしておきましょう。
開放装置の後ろ側のメンバーには[フォトマイクロスイッチ]を取り付けて主軸の回転数をMachに読み込ませましょう。

ドグになる分部はバランスも考慮して3mmのポリカーボネイトの円盤の半分に黒色塗装を施して使用しましょう。

固定はベアリングナットにM3のビス4本で固定で良いでしょう。
完成した[主軸]分部です。

我ながら、まぁ〜まぁ〜の出来具合ではないでしょうか。

早速、既存のCNC本体に取り付けましょう。
Z軸に[(新)主軸]を取り付けて軸芯の調整を行いましょう。

要領は私のHPの【特集】の【CNCを作ろう】で詳しくご紹介していますので、そちらをご参考にして下さい。

で・・・取り敢えずは『ビシっ〜』っと主軸の芯出し調整を終わらせましょう。
次に[コレットチャック開放装置]の駆動源を作りましょう。

上述しましたように、極一般的なDC24V ギャーモータを使用します。
リサイクル品で千円チョットでしょう。

左画像のようにギヤードライブとします。
もっと減速比の大きなモーターが手に入れば直接、ワイヤーを引く為のプーリーを軸に取り付けても良いでしょう。

回転角度(引き量)制限の為のマイクロスイッチも取り付けておきましょう。

駆動される側の真鍮製ギャーは制限用のマイクロスイッチの調整がし易いように不要な部分をカットして置きました。
対向するギャーの歯をきちっとあわせる為にボルトのネジ山部で芯を出すのはチョット照れちゃいますので・・・・

キャップスクリューの頭を切削してプレート側の穴にインローで嵌め込み締め付けましょう。
なんとなく・・内部構造は・こんな感じです。

        (^。^)
開放装置にワイヤー用のプーリーを作って取り付けましょう。
[コレットチャック開放装置]の駆動装置はコラムの上部に取り付けましょう。

ある意味構造がオープンギャーですので切削による屑がかからないようにって事で高い位置が良いでしょう。

    これで主軸分部は完成です。

        初心者の私の技量では・・・まぁ〜こんなものでしょうかぁ〜   ヽ(^。^)ノ

今回は特に特殊な材料や装置を遭えて使用しないような構造と加工技法で製作しましたので時間さえ掛ければ私以上の出来栄えで誰しも完成させる事ができると思いますので是非チャレンジしてみて下さい。

結果的には従来型と、そう大きな違いはありませんが大きな違いはATCの為に簡単に[ツールホルダー]が外せる構造であるという事です。

いわゆる市販のフライスやCNC、または自作の既存の機械でも主軸を改造して[ツールホルダー]が簡単に外れるようにさへなれば[マシニングセンタ]にバージョンアップが可能であると言う事です。